部屋ではなく、動線をたどる
間取り図を見ながら部屋ごとに回ると、実際には使っていない場所まで見て、 本当に困っている場所を見落とします。本人の1日の動きをそのまま歩いてもらうのが確実です。
典型的な動線は次の順番です。この順でたどると、抜けが出にくくなります。
| 順 | 区間 | 見るところ |
|---|---|---|
| 1 | ベッド・布団 → 立ち上がり | 立ち上がりに何を掴んでいるか。ベッド柵の有無 |
| 2 | 居室 → 廊下 | 敷居の段差。ドアの開き勝手と有効幅 |
| 3 | 廊下 → トイレ | 夜間に通るか。照明。壁に手をついた跡があるか |
| 4 | トイレ内の動作 | 便器への接近・方向転換・立ち座り |
| 5 | 廊下 → 洗面・浴室 | 脱衣室の段差。床の濡れ方 |
| 6 | 浴室の出入り・またぎ・洗い場 | 浴槽の高さ。滑りやすさ。手を掛けている場所 |
| 7 | 居室 → 玄関 → 外 | 上がり框の段差。靴の脱ぎ履きの姿勢。ポーチの段 |
歩いてもらうときは、手伝わずに、いつもどおりやってもらうのが大事です。介助してしまうと、本人がどこで詰まるのかが見えなくなります。 危ないときにすぐ支えられる位置に立って、黙って見るのが基本です。
必ず測る寸法
「あとで測ればいい」と思った寸法は、たいてい測り直しになります。次の項目は、 該当する場所があれば無条件で控えておきます。
| 場所 | 測る寸法 | なぜ必要か |
|---|---|---|
| 共通 | 本人の大転子の高さ(床から) | 手すりの高さの基準になる |
| 廊下 | 有効幅員(壁から壁) | 手すりを付けると内側に50〜100mm狭くなる。歩行器が通るか |
| 出入口 | 開口の有効幅・建具の種類 | 引き戸への変更が必要か。車いすなら750mm以上ほしい |
| 敷居 | 段差の高さ | 5mm以上なら解消の対象になりうる |
| 上がり框 | 段の高さ・奥行 | 1段で上がれるか、踏み台が要るか |
| 階段 | 蹴上・踏面・階段幅・段数 | 手すりの長さと勾配の算定に要る |
| トイレ | 便器先端から前壁・側壁までの距離、便座の高さ | L型手すりの位置決めに直結する |
| 浴室 | 出入口の段差、浴槽の縁の高さ(洗い場から)、浴槽の深さ | またぎ動作ができるかの判断 |
| 壁 | 下地の位置(実測) | 手すりが付くかどうかが決まる |
言葉より、家が語っていること
「困っていることはありますか」と聞くと、多くの方は「特にない」と答えます。 遠慮もありますし、少しずつ不便になったことは自覚しにくいものです。 家のほうにヒントが出ています。
- 壁の手垢・黒ずみ — そこに手をついて歩いています。手すりを付けるべき場所がそのまま出ています
- 動かされた家具 — タンスや椅子が動線に沿って並んでいたら、それを掴んで移動しています(家具は倒れるので危険です)
- 丸めたタオル・すのこ — 段差や滑りを自分で何とかしようとした跡です
- 使われていない部屋 — 2階に行かなくなった、風呂に入らなくなった。行けなくなった結果かもしれません
- 床のこすれ跡 — 足が上がっておらず、すり足になっています。わずかな段差でもつまずきます
見つけたら「ここ、手をつかれていますか」と具体的に聞きます。 漠然と聞くより、はるかに正確な答えが返ってきます。
聞き取りで外せない項目
| 項目 | なぜ聞くか |
|---|---|
| 利き手・麻痺側 | 手すりを付ける壁が左右どちらになるかが決まる |
| 歩行の状態(杖・歩行器・車いす) | 必要な有効幅と、手すりの連続性が決まる |
| 夜間トイレに行くか・回数 | 夜間の動線と照明が課題になるかが決まる |
| 入浴の頻度と、誰が介助するか | 介助者が入る余地を残す必要があるか |
| 転倒歴(いつ・どこで) | 最優先で直す場所が決まる。理由書にも書ける具体的な事実になる |
| 同居家族と、家の中での役割 | 家族の動線を塞がない配置にする必要がある |
| 持ち家か借家か | 借家なら家主の承諾が要る。原状回復の条件も確認する |
| 今後の見通し(退院後か、進行性か) | 今だけでなく数か月先を見て決める必要があるか |
写真の撮り方
写真は、申請書類に使うものと、社内で見積を組むためのものを兼ねます。 あとから撮り直せないので、その場で撮り切ります。
| 種類 | 撮り方 | 用途 |
|---|---|---|
| 引きの写真 | その場所の全体が入る位置から。立ち位置を覚えておく | 改修後に同じ画角で撮る。申請の前後比較に使う |
| 寄りの写真 | 手すりが付く壁、段差の部分など、工事する箇所そのもの | 見積・施工の指示に使う |
| スケールを当てた写真 | メジャーやスケールを段差・開口に当てて一緒に写す | 寸法の証拠になる。事務所で見返せる |
| 動作の写真 | 本人が実際に動いているところ(承諾を得てから) | 理由書に書く動作の根拠になる |
改修前の写真は、必ず「引き」で押さえます。寄りだけだと、完成後に同じ画角で撮れず、前後比較の書類が作れません。 撮った位置に印を付けておくか、扉の枠など動かない物を画角の端に入れておくと再現できます。
帰る前に、この場で確認する
- 本人に、実際に手すりの位置で握ってもらったか
- 下地の有無を、その壁で実際に確かめたか
- 改修前の「引き」の写真を、全箇所ぶん撮ったか
- 借家なら、所有者の承諾が取れそうか確認したか
- ほかの介護保険サービス(福祉用具の貸与・購入)で足りる部分がないか整理したか
- 誰が理由書を書くか決まったか
最後の2つは見落とされがちです。据置き型の手すりや浴槽内すのこで済むなら、 工事をせずに福祉用具で対応するほうが早く、20万円の枠も温存できます。 理由書の書き手が決まっていないと、そこで止まります。
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