住宅改修プロ実務ノート
手すりの取り付け位置の決め方
高さの基準は「大転子」
横手すりの高さの根拠になっているのは、大転子(だいてんし)の高さです。太ももの付け根の外側、立ったときに横に出っ張っている骨の位置で、 ここに手すりがあると、腕を自然に下ろした状態で握れて、体重を預けやすくなります。
日本人の成人でおおむね床から750〜800mmに来るため、これが一般的な設置高さになっています。つまり750mmは絶対の数字ではなく、その人の大転子の高さに合わせるのが正解です。背の高い人なら800mmを超えることもあり、車いすを併用する人や小柄な人なら低くなります。
場所ごとの位置と高さ
| 場所 | 種類 | 高さ・位置の目安 |
|---|---|---|
| 廊下 | 横手すり | 床から750〜800mm。壁から手すり芯まで50〜60mm離す(手が擦らない距離)。曲がり角は途切れさせず連続させる |
| 階段 | 横手すり(勾配なり) | 段鼻(だんばな)を結んだ線から750mm前後。上下端は水平部分を200〜300mm延ばして、踏み外し位置まで手が届くようにする |
| 玄関(上がり框) | 縦手すり | 框の先端から100〜150mm手前の壁。下端は框の上面から750mm程度、上端は肩より高い位置まで(長さ600〜800mm) |
| 玄関ポーチ・階段 | 横手すり(屋外) | 廊下と同じ高さ。屋外は樹脂被覆など握って冷たくない材にする。雨で滑らないものを選ぶ |
| トイレ | L型手すり | 便器の先端から200〜300mm前方の側壁。横手すりは便座面から220〜250mm上、縦手すりはそこから上へ600〜800mm |
| 浴室(出入口) | 縦手すり | またぎ動作を支える。洗い場の床から750mmを下端に、上へ600〜800mm |
| 浴室(洗い場) | 横手すり | 洗い場の床から750〜800mm。立ち座りを支えるなら、シャワーチェアの座面から測り直す |
| 浴槽 | 縦手すり / L型 | 浴槽の縁をまたぐ位置。浴槽縁から上へ、握った手が肩より下に来る範囲 |
縦手すりは「体を引き上げる・体を支える」ため、横手すりは「体を移動させる」ためのものです。 立ち座りやまたぎ動作がある場所は縦、歩いて移動する場所は横、というのが基本の使い分けになります。
利き手・麻痺側で左右が変わる
設置する壁を決めるときは、健側(動くほう)の手で握れる側に付けます。片麻痺がある人なら麻痺していない側です。ここを間違えると、 正しい高さで付いていても使われません。
階段は特に注意が必要で、上るときと下りるときで健側が入れ替わります。 どちらを優先するかは、本人がどちらの動作でより不安を感じているかで決めます。 原則としては、危険度の高い「下り」で健側になる壁を優先します。予算が許すなら両側が理想です。
下地 — ここで工事の可否が決まる
手すりは、人の体重が一点にかかります。石膏ボードだけに留めたものは、 もたれた瞬間に抜けます。下地(柱・間柱・下地補強材)にビスを効かせることが絶対の条件です。
在来木造の場合、間柱はおおむね455mmピッチ(3尺=910mmの半分)で入っています。柱の位置を1本見つければ、そこから455mm間隔で当たりを付けられます。 ツーバイフォーは455mmまたは303mm、 軽量鉄骨は455mm前後が多いものの、 開口部の周りは崩れるので、必ず実測で確認します。
| 探し方 | できること | 限界 |
|---|---|---|
| 下地センサー | ボード裏の密度差から下地の端を検出できる | 断熱材や配線に反応することがある。端は分かるが中心は推定 |
| 針式(細針を刺す) | 確実に有無が分かる | 小さな穴が残る。壁紙によっては目立つ |
| 叩いて音を聞く | 道具なしで大まかな当たりが付く | 経験に頼る。防音壁など判断しにくい壁がある |
| コンセント・スイッチから追う | ボックスは間柱に固定されているので基準になる | どちら側に付いているかは開けないと分からない |
下地が無い、または位置が合わない場合は、下地補強板(受け材)を先に入れます。 厚15mm以上・幅150〜200mm程度の板を、柱・間柱にまたがるようにビス留めし、その上から手すりを付けます。 この補強は介護保険の⑥付帯工事として申請できるので、見積で落とさないようにしてください。
ブラケットの間隔と端部の納まり
ブラケットの数はメーカーの施工要領に従うのが前提ですが、目安は次のとおりです。
| 項目 | 目安 | 理由 |
|---|---|---|
| 端部からの距離 | 100mm以内 | 端が跳ね上がるのを防ぐ |
| 中間の間隔 | 900mm以内(下地位置に合わせる) | たわみを抑える。下地優先で決める |
| 継ぎ手の位置 | ジョイントの直近にブラケットを入れる | 継ぎ目に荷重がかかると外れやすい |
| 壁からの離れ | 手すり芯まで50〜60mm | 手が壁に擦らず、握った手が抜けない距離 |
端部の処理は、 事故防止という意味でいちばん大事なところです。手すりの端をそのまま切りっぱなしにすると、 袖口や衣類が引っ掛かって転倒につながります。端は壁側または下向きに曲げ込むのが原則で、エンドブラケットや曲がり部材を使って納めます。
太さは直径32〜36mmが標準です。 握力が落ちている人には細めの32mm、しっかり握って体重をかける屋外用は34〜36mmが選ばれます。 握ったときに親指と人差し指がわずかに重なるくらいが、力を入れやすい太さです。
設置前の最終確認
- 本人に実際に握ってもらい、高さと位置を確認したか
- 健側(動くほう)の手で握れる側の壁か
- ビスが下地に効いているか(石膏ボードだけになっていないか)
- 端部が壁側または下向きに曲げ込まれているか
- 手すりの下や周囲に、動作の邪魔になる物が置かれていないか
- 下地補強を入れた場合、見積の付帯工事に計上したか
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